和敬塾 新南寮ブログ

2019年4月より和敬塾南寮、乾寮、巽寮の3寮が合併します。3寮の個性を融合させた新南寮での日常を発信していきます。

読書の秋 広報部リレーブログVol.3

こんにちは。広報部の大井です。

 

まだまだ日中が暑い日が続きますが、ふと吹く風が涼しかったり、夜窓を開ければ風に混じって虫の音が舞い込んでくるようになったりして、季節の移ろいを感じることができるようになりました。

 

そんな季節の変わり目に私が紹介する本は、恒川光太郎さんの「雷の季節の終わりに」です。

honto.jp

 

 この小説は、地図に載っていないが、日本のどこかに存在する『隠』という隠れ里が舞台の和風ファンタジー小説です。この里には、春夏秋冬の他にもう一つの神の季節である『雷季』という季節が存在します。その季節になると、人がたびたび消えるのですが、これは神の季節に起こることだから仕方のないことなのだと住民は言い、主人公の姉もこの季節に忽然と姿を消してしまいます。 この物語は、そんな『隠』で育った主人公の少年の冒険譚です。

 この本の魅力は、物語全体から醸し出される、どこか懐かしい雰囲気です。奇想天外な異郷ではなく、日本の原風景に通じる異界は、本当にどこかにあるかもしれないと思わせるような、日常の少し先にある存在として描かれ、郷愁を感じさせるものとなっています。

 そして、このノスタルジックな雰囲気は、恒川光太郎さんの淡々としつつも透明感のある美しい日本語で描かれることでより一層際立ちます。すんなり読めてしまうのに、日本語の美しさも感じることができる文体は、この作者の魅力の一つだと思います。

 

 秋の夜長に、御伽噺のような懐かしい世界観に浸ってみてはいかがでしょうか。ぜひ、この本を見かけた際は手に取ってみてください。

 

次回の更新は、9/15(火)です。